世界に数冊の希少本 ―『私家本』の魅力4

『私家本』という出版形式の可能性

私家本は単なる本ではありません。

そこには作者の価値観や美意識、人生が反映されます。

自分の軌跡をまとめた備忘録であり、次世代へとつなぐ教訓であるかもしれません。

電子化の進んだ現代において、私家本もまた必ずしも紙で出版する必要はなくなりました。電子には電子の良さがあります。

ただ永続性という観点でなら、紙の出版に分があるでしょう。

ある日突然パソコンが起動しなくなり、中に入れていたデータを取り出せなくなった。あるいはハードの仕様が変わったことでデータを読み込めなくなった。なんだかよく判らないけどデータが破損した……などなどの経験はないでしょうか? 

それに比べて紙の出版物は、よほど保存状態に問題がない限り、何世代、何世紀も受け継いでいくことができます。

また、金箔や時には宝石などをあしらった装丁、その質感は、デジタルでは再現しきれません。この現物性により、紙の本は『かたちある記憶』となるのです。

日本国内で年間に出版される紙の書籍は、発行点数も販売数も共に減ってきています。紙やインクなどの原材料高騰による単価の上昇も影響しているかもしれませんが、不特定多数にむけた大量生産というシステムがもはや時代遅れとなっているのではないでしょうか。

マスメディアでの情報共有を志向してきた今までとは違い、これからは特定の狭いコミュニティにおける情報発信、共有、そして交流が求められているのではないかと感じます。

『私家本』は、そうしたニーズに応えられる魅力的なツールなのです。


写真提供:フリー素材サイトぱくたそ様

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