ひとと書物
現存する世界最古のピクトグラム(絵文字)は、紀元前3000年頃に書かれたものとされています。
狩りの獲物の数や種類、場所――最初の用途は記録でした。ひとは忘れる生き物なので、経験や知識を記録して残す必要があったのです。
この「(誰かのため、あるいは後世に)残す」という感覚は、人類の文化的躍進なくしては生まれないものなのだとか。
ハーバード大学のハウザー教授は人間の特性として、異なる知識領域の思考を自在に組み合わせたり、知覚・感覚経験によらない思考をすることができると説いています。未来について思いを馳せることは、まさにこの特性によるものなのです。
その後、持ち運びのできる記録媒体を生み出したことで、その記録(情報)は著作者から遠く離れた場所へも届けられるようになりました。逆に言えば、遠い異国の文化や歴史を、書物というかたちで自分の国へ持ち帰ることができるようになったのです。
エジプトのアレクサンドリア図書館の話は有名ですが、ここでは新旧織り交ぜた世界各地の書物を研究できたおかげで、幾何学や天文学、人体解剖学などの学問が大きく発展したと言われています。
情報やひとの想いは、書物によって時空間を超越するのです。
写真提供:写真AC様
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