世界に数冊の希少本 ―『私家本』の魅力3

『写本』はオーダーメイドの芸術品

印刷技術が発明される以前の書物は、書写によって複製されていました。

修道院の中で修道士たちが聖書の書写をしているシーンを、映画で見たことのあるひともいるのではないでしょうか?

やがて書写は、内容の書き写しだけではなく、文字の美しさ、レイアウトの巧妙さ、挿絵や装飾画の精緻さなどが求められるようになります。

王族や裕福な家柄の者は、技術の高い職人に写本制作を依頼しました。『フランス女王ジャンヌ・デヴルーの祈祷書』など贅を凝らした私家本もつくられ、有名な写本師や工房に依頼することがそのままステータスの指標となったのではないかと考えられます。

また、芸術性や稀少性により高額で取り引きされたこと、使われる紙、金箔や顔料などの材料も高価なものであったことから、こうした書籍は財産目録にも記載されました。

すべてが手作りされた私家本は、世界に1冊しか存在しないもの。そのため、まさに家宝として代々受け継がれていったのです。それはその家の知的資産――教養や文化の象徴としての価値も持っていました。


写真提供:フリー素材サイトぱくたそ様

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